ゲームしタイチロー

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平沢進アルバム「BEACON」感想

序文(読まなくていい)

最後に記事を書いてから1年ぐらい間が空いたようです。もはやどういうノリで文章を書いていたか思い出せませんが、過去にはこれの倍以上間が空いた時期もあったので本ブログを読んでくださる方(主に知人)には慣れた事かと思います。

 

記事に至った経緯(気になる人以外は読まなくていい)

1年ぐらい前にこんな記事↓を書きました。

当時の平沢進のソロアルバムは2015年発売の「ホログラムを登る男」、核P-MODELを含めると2018年発売の「回=回」が最新でした。

この度2021/7/28に最新ソロアルバムの「BEACON」が発売されたので、それを聴いた初見の所見感想をそれぞれの曲ごとに綴っていこうかと思い筆を執った次第です。

あまり深い聴き込みや考察をしていない段階の感想のため、後ほど見返したらトンチンカンな事を言っている可能性がありますので予めご了承ください。こういうライブ感のある感情の吐露もたまには良いんじゃないかという予防線を追いで継ぎ足しておきます。冗長構成は大事ですからね。

↑は公式から出されているダイジェスト試聴動画です。持ってない、聴いてない方はこちらを参考にしながら読み進めるとよいと思います。その状態でこんな記事読んで面白いか?という疑問はありますが

 

感想(ここから本題)

 

1.BEACON

この曲は先日のライブ「24曼荼羅」1日目で先行公開?されていた曲です。当時は平沢も中々の高齢(67)であり、往年のような歌声が出せるのかと不安視していた部分も少しあったのですが、アンコールでこの曲を聴いてそんな不安が吹き飛んだのを覚えています。冷静に考えて67歳が出せていい声ではなくない?

曲の話としては、歌い出しから気持ちのよい高音が響く開放感と清涼感溢れる、アルバム1曲目にして表題曲にふさわしいキャッチー(当社比)な曲だと思いました。歌詞の「放てと枷打つ雨」というフレーズにHUMAN-LEみを感じずにはいられません。

曲調に反して(サビ以外の)歌詞がやたら不穏なのが目につきますが、これはむしろ「惨憺たる世界からの救済のBEACON(目印)」のような文脈があるように感じました。

 

2.論理的同人の認知的別世界

タイトルが長すぎる示唆的で考察の余地が大いにありそうです。最初に見た時は多重人格的な話なのかと思いましたが、歌詞を見るに「同じ人間でも世界の見方は違う」みたいな意味なのかな、と思いました(大外れの可能性あり)。

1曲目のBEACONとは対照的に、曲調・歌詞共に不穏に振り切ったような印象を受けます。「鬼畜」とか「腐乱」とかいう語彙が出てくる時点で穏やかな曲ではない

ダイジェストで聴いたときからイントロの「ワーオワイ」って言ってる部分が中毒性があって好きだったのですが、歌詞カードみたらバッチリ歌詞が振られててちょっと笑ってしまいました。

あと途中で珍しい「語り」パートが唐突に流れて驚きました。ダイジェスト版ではこの部分は流れないので印象がだいぶ異なります。今作のダイジェスト詐欺1曲目です(褒め言葉)。

 

3.消えるTOPIA

ダイジェスト詐欺2曲目にして今作最大のダークホースです。

ダイジェストだと暗く不穏な雰囲気があるのでタイトルの「TOPIA」というのはユートピアを指した救いのない曲なのだろうと思っていたのですが、ダイジェスト範囲外のイントロ・サビ部分を聴くとその印象が大きく変わります。明るく優しい曲調に圧倒的希望を見せる歌詞で、むしろ消えているのはディストピアだった、という印象を受けます(両方という可能性もありますが)。

イントロの「白虎野」と「亜呼吸ユリア」を混ぜたような旋律とサビの「たった今」のリズムが好きです。(GOIRYOKUの終わり)

 

4.転倒する男

「〇〇男」シリーズ最新作(?)

ダイジェストにも採用されているサビ前の部分の歌詞が「立てGO! 立てGO! わっはー」だったのが個人的に衝撃的でした。ここだけ作詞担当変わったのかと思った

あとサビの「見よ」の使われ方があまりに楽器すぎて面白いです。ミヨー

聴けば聴くほど味が出てくる感じとか全体の構成とか、曲調こそ違いますが全体的に同じ「〇〇男」シリーズの「死のない男」を彷彿とさせる所があります。ミヨー

 

5.燃える花の隊列

タイトルが何やら穏やかならざる曲ですが、実際に聴いてみるとそんなに悲劇的な感じの曲ではありませんでした。今までのアルバムでは「火」という言葉はネガティブな意味合いが強い単語だった(「王道楽土」などの印象が強いのかもしれませんが)のに対して、今作は「BEACON(かがり火)」ということで「火」にポジティブな意味合いが込められている気がします(大外れ予定地)。

曲としては、とかく音の構成が何度も変わる印象が強いです。同じメロディでも構成する音を変えることでまた異なる雰囲気が醸し出されており、1つの曲ながら「組曲じゃん」と思いながら聴いていました。特にイントロの「還弦主義」風の音から一気に「核P-MODEL」のようになる下りが好きです(もちろん全部すき)(ウィー)

 

6.LANDING

イントロを始めとした音使いにどこかノスタルジーを感じる曲だと思いました。一体僕のノスタルジーはどこに結ばれてしまったのでしょう

後ろで度々流れる低音のコーラス、サビ前のファルセット等も含めて全体的に非常に耳が気持ちよく、実質ASMRと言っても過言。「点呼する惑星」のインスト曲にも使われ、twitterでも時折本人が言っている「Hard Landing」という言葉を彷彿とさせるタイトルですが、曲の印象で言えばむしろSoft Landingといった印象です。まあ次の曲で着地狩りされるんだけど

 

7.COLD SONG

「〇〇SONG」シリーズ最新作(?)

この曲はなんと公式からフル版が上がっています。ダイナミック暑中見舞い

平沢の中では非常に珍しいカバー曲で、原曲は1691年のオペラ「アーサー王」の劇中曲だそうです。音源や曲調がオペラとはかけ離れたものである他、歌詞は翻訳でもない平沢オリジナルのものなのであまり面影はありませんが。

とりあえず↑を再生していただければ分かると思いますが、ラスボス然とした迫力と絶望感を携えた曲となっています。ただ、歌詞としては絶望の中から希望を見出すようなものとなっており、中々熱い曲だと思います。COLDだけど

 

8.幽霊列車

「幽霊〇〇」シリーズ最新作(?)

中速運行な感じのリズムやどちらかと言えば有機的な音源から、登場する列車は「ハルディン・ホテル」に登場するような汽笛を鳴らしゆくタイプのイメージなのかなと思っています。

過去シリーズでもそうでしたが、この「幽霊」という単語には恐怖や終わりのようなネガティブな意味合いはなく、救済のために駆けるある種の優しさのある存在として描写されているのが特徴的だなと思います。SIREN(ゲームのほう)の屍人のような状態である可能性も否めませんが

イントロのギターがすごい色気を醸し出していて好きです。その前のアワワワしてる部分も好き

 

9.TIMELINEの終わり

この曲もなんとフル版が公開されています。あまりにも太っ腹。

BEACON同様「24曼荼羅」で演奏されていました。僕は2日目配信はボヤボヤしてたら期限切れで見られませんでしたが。

BEACON同様に透明感・清涼感溢れる聴きやすい曲です。平沢曲の中でもけっこう癖が少ない方だと思うので割と初心者向けのほうなんじゃないかと思います。歌詞が理解できないのは洋楽かなんか聴いてると思えばいいと思います

3番のAメロでハモリがなくなる所が開放感があって好きです。今までありそうで無かった展開ですが、今まで見えなかった一面が見えるのが一番破壊力が高いというのを実感しました。いわゆる不良子猫理論ですね。いわゆらねーよ

 

10.ZCONITE

短めのインスト曲です。タイトルは造語らしいです。

インスト曲とは書きましたが、平沢本人の解読不能なコーラスに加え、呪文や悲鳴のような声も入っているので満足感が高いです(屍人のAmazonレビュー)。普通にボーカル曲に近い聴き方ができると思います。あと意味怖とか洒落怖のBGMにちょうどいい

 

11.記憶のBEACON

アルバム最後の曲です。

「論理的同人の認知的別世界」の語りから始まり、いきなり始まる多重コーラスに襲われてアニメのEDみたいな感覚になってちょっと感極まってしまいました。一時的狂気を発症していた可能性があります

前述の語りを含め、アルバム内のこれまでの曲を示唆するような語彙が多く登場し、BEACONというアルバムを総括するに相応しい曲だと思います。曲単体で言えば「TIMELINEの終わり」が一番エンディングっぽい曲ですが、このアルバムのエンディングとしてはこの曲がこの上なく合うと思います。

 

まとめ

全編通して難解な歌詞や仰々しい多重コーラスなどは通常運行といった感じでしたが、その歌詞には希望的な示唆が感じられ、歌声にも「優しさ」の片鱗を見たような気がします。

素晴らしいアルバムだったと思います。(GOIRYOKUの終わり(アンコール))

「買え」「聴け」と強制する気はありませんが1つの事実として、僕は非常に満足しました。

(追記)個人的にお気に入りの曲は「消えるTOPIA」と「幽霊列車」です。前者はダイジェスト版からのギャップというリアルタイム性のある経緯を抜きにしてもサビの開放感がとても心地よく、後者はギターの旋律に中毒性があるので繰り返し聴きたくなります。(もちろん他の曲も好きです)

以上です。ここまで読んでいただいてありがとうございました。